1970年頃の部品実装とプリントパターン

件のTS-700GⅡを色々と弄っていて思うことである
この機械も1975年頃の製造と思われる

日本のプリント基板の歴史は以外と古い、戦前の昭和11年に民生用ラジオに搭載されている
1950年代以降のトランジスタ化による機器の小型化で、プリント基板は多用される
プリント基板によって、配線の品質が上がると共に生産の効率化が大きく進み、実装密度の高い商品が続々誕生したのであった

そのプリント基板なのであるが現在はその殆どが機械で生産される、実装密度も半導体に近いモノになっている
しかしその性質上、大量生産には向くが、多品種少量生産の場合は基板の共通化などの工夫が必要となる
アマチュアレベルで多くて数台とかの制作規模だと、プリント基板のアートワーク設計(パターン設計)や製造装置への設定等々のイニシャルコストも出ないと思う

さて前置きはここまでとして、TS-700GⅡの基板であるが、多分手作業で基板に部品を実装していのではないかと思う
基板のランド(部品をハンダ付けする領域)にリード部品のリード線が、きちんとパターン方向に曲げて取り付けてある
これはこれで新品時の品質を上げる当時の手法である
私が小学生の頃、親にねだって買って貰った2石ラジオキットの組立説明書にも、リードは外れない様にパターン方向に3mm程度曲げて取り付けるとか言ってあった記憶がある

只、リードを曲げて取り付けてある部品を、取り外すのは集中力と根気が必要である
この頃のアナログ機器は単層基板なのであるが、ベーク基板と呼ばれる紙フェノール基板である
問題は、修理時にプリントパターンが傷みやすいのである
更にリードを曲げて取り付けてあるので、ハンダ吸引機を使っても結局ハンダゴテを当てながら曲げてあるリードを元に戻す作業が必要になる

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<プリントパターンのハンダを除去した所 ランドに沿ってリード曲げてある>

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<部品を外した所 パターンを傷つけない様に細心の注意が必要>

この作業を雑に行うと、あっという間にプリントパターンを剥いでしまうことになりかねない
パターンにストレスを加えない様に、リードの曲げを元に戻すのであるが、実装密度の高い箇所だと、複数の部品を合わて絡げでいることもある
ハンダを除去して、該当部品が複数の部品と絡げてあると、気持ちがブルーになってしまう

ネットで検索すると、古い電解コンデンサは有無を言わずに交換とか書いてあるが、集中力と根気のなさせる技と思うのである
特に3本足のトランジスタだと更に面倒である

まだTS-700は比較的修理の作業性が高いのであるが(プローブも当てやすい)、作業性の悪い機械でこの作業を行うのはかなり躊躇してしまう
(仕事でやられている方は本当に大変かと思う)

古い機械を弄るのも、気合と根性と技能が必要みたいである

TS-700GⅡ をさらに弄ってみた

件のTS-700GⅡである
とりあえず、色々と試験して来たのであるが、FMの受信音がどうにも歪ぽいのである
USBでは気にならなかったのであるが、今回のその対策である

最初は、身近のハンディ機からFM信号を出して信号を追ってみたのであるが、いかんせん私の技量ではオシロスコープの波形で不具合箇所を特定出来ていない
(まだまだ技量と勉強不足である 殆ど言い訳であるがFM変調のSGが欲しいのである)

当初はFM IFユニットのAF出力が怪しいと思ってとりあえず、電解コンデンサを換えてみたのであった なんとなくは良さ気な感じがするが、ここも一個も容量抜けの確認は出来ていない

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<音声主力系の電解コンデンサを交換したAFユニット>

今回はAF入力段から電解コンデンサを換えてみることにしてみた
これって以外と面倒である、パターンの裏面が把握出来ていれば良いのだが、一発で該当のランドに当たらないことが多い
大きめの電解コンは楽にランドが判明出来るので比較的楽である

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<TS-700GⅡで交換した部品たち 電解コンデンサの容量抜けは一個も発見出来ず..>

という事で、今回も一個毎に外したあと、容量計で容量を計測してみた
結局明らかな容量抜けは今のところ一個も無い
只、一箇所の電解コンデンサを外した所、液漏れらしき後が有り、該当の電解コンデンサを交換した所、歪感は改善したのである

が..まだ歪感が残るのは多分気のせいなのであろう….. (まだまだ続くかな)
けれど、該当の電解コンデンサの容量は規定通りであった
これも勉強不足で何故そうなるかが分かっていない

受信音質も改善した所で、ダミーロードを使って144MHz~146MHzまで出力の確認を再度行った
145.50付近から出力が低下し、146MHz付近だと5W程度まで低下する
私はお月様まで電波を飛ばすことも無いので、このままで良いと思ったのであるが、気持ちが悪いので結局もう一度終段調整をやり直したのであった

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<もう一度再調整している所>

結果として、144MHz~146MHzまで10Wの出力は出る様になった

後は我が家の、古い機械たちの一員として活躍してもらうばかりである

 

超高級品 の グリットディップメータ

DELICA SP-7型  高級品なのである

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<高級なグリットディップメータ>

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<高級な糸かけ式減速機構>

普及品のグリットディップメータは、発振周波数の調整ダイアルが内部のバリコンに直に繋がっている
微妙な周波数の調整については、技が必要である
高級品である、このグリットディップメータは周波数調整ダイアルが糸掛け式で減速機構があり、発振周波数の調整がスムースである
メータも大きな丸型で、DIP点の変化がとても見やすいのである

普及品と大きく違うのは、プローブコイルである
HamBandGridDipMaterは10mm径のボビンにプローブコイルが巻いてある
普通に使うには十分であるが、金属ケースに入っているIFT等のコイルの同調確認をする時は、どうしてもコイルのQ不足を感じることがある

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<高級なプローブコイル>

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<高級なメータ とても見やすい>

ところがSP-7型のプローブコイルは19mm径である、従ってプローブコイル自体のQ値が高いので、結合度が弱い共振回路でも共振値が測りやすいのである
またDIP点の変化も急峻である
本体電源のジャックはこれまた高級なキャノンコネクタ 2Pである

当時はこのDELICA SP-7型は事業者向けの測定器であった
現場で、何をどの様に計測していたかは、知るよしも無いが、吸収型周波数計や信号発生器もしくは電界強度計として活躍していたのかも知れない

ちなみに、対応周波数は1.5MHzから250MHzを6個のプローブコイルでカバーしている
なお、最も周波数の高いAコイルは先端に透明のキャップがあり、結合方向が確認出来るとともに無用な接触事故を防止している

私は普段は、普及品のHamBandGridDipMaterを使用しているが、どうしても同調が測れない時に、この高級品に登場してもらうのである
特に高級品はQが高く、空中線の共振点を測る際にはとても便利である

この高級品は大先輩の矢花氏から無理矢理強奪しているのである
(申し訳ありません..とても役にたっています)

高周波測定器が揃っている大先輩(大先輩はアマチュアと仰っているがプロの事業者である)であるが、ネットワークアナライザが有ろうが、グリットディップメータは手放せないと言う
プリミティブな測定器であれ、便利なモノは便利である

 

TS-700GⅡ に 周期数カウンタ を接続してみる

TS-700に件の周波数カウンタを使ってみる

ふっとした思い付きで、件の周波数カウンタをTS-700GⅡで試してみたのである
件の周波数カウンタは、HF帯用で設計したため、表示周波数の最大値が99.999999MHzである
では、と言うことで表示を1MHz表示として実験してみた 早い話が14X.nnn,nnnMHzのnnn.nnnKHzを表示するカウンタと言う事である
TS-700のVFOは8.2MHzから9.2MHzの周波数であり、VFOの発振周波数の増分方向と送受信周波数が一致している
オフセット周波数は単純に – 8.2MHz と設定すれば、KHz帯の周波数を表示するカウンタとなるのである

TS-700はVFO出力が外にに出ていないので、実験用に分岐コネクタをでっち上げて、周波数カウンタと接続する
但し、結線はなるべく短くする必要がある

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<テスト用の分岐コネクタ>

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<分岐コネクタをTS-700GⅡに取り付けた 古い機械はスペースが有って遊ぶには最適である>

実際に使ってみると、便利である
何故なら、製造後40近く経っている機械であり、VFOの下端と上端の周波数は合わせ込んでいるが、中間値では±3KHz程度のダイアル表示との差がある
VFOのダイアル上の表示差を気にしないで、デジタル表示で正確な送受信周波数を確認出来るのは便利である

純正でデジタル直読が可能なTS-700Sとの差は、145MHz/144MHzのバンド切替えとモード切替えが、自動で周波数表示に反映され、MHz表示が3桁フルに表示されることである

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<144.64MHzを受信している所 これは便利である>
ちょっとしたイタズラと実験であるが、それなりには使えそうではある
TS-700GⅡは100KHzのマーカが付いているので、比較的VFOの校正も楽であるが、TS-700無印の場合は1MHz単位のマーカである
TS-700無印機の方が、件の周波数カウンタの利用価値は高いかも知れない

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<この周波数カウンタは測定周波数をオフセット周波数として簡単に登録出来る>

この周波数カウンタは測定周波数を、オフセット周波数として、オフセットメモリに簡単に登録出来るのである

今回はオフセットメモリの7CHに登録して使って見たのであるが、パソコン無しでオフセット周波数の登録が出来るのは便利である 誰も褒めてはくれないのでこの件だけは自分で自分を褒めることにしよう

 

 

旧日本陸軍99式’飛5号受信機’よみがえる CQ誌2015年10月号 掲載記事の補足

§0 最初に

71年前 (昭和19年製造)
旧日本陸軍99式’飛5号受信機’よみがえる
CQ誌2015年10月号 掲載記事の補足
JA0BZC 矢花 隆男

CQ誌2015年10月号に「旧日本陸軍99式’飛5号受信機’よみがえる」を寄稿させて頂きました
紙面の都合で、掲載出来なかった内容を補足として、このブログで公開することにしました
今回の投稿記事については、戦前の日本の無線技術をデータとして残したいとの考えもあります
執筆の際に計測したデータと集めた各種資料を興味がある方々に見て頂くことが、次の世代への技術継承に繋がると考えています。
ご興味のある方は、CQ誌2015年10月号に掲載された「旧日本陸軍99式’飛5号受信機’よみがえる」の本文とこのブログの記事補足及び資料をお読み頂ければ幸いです

なおこの後数回、このブログに投稿させて頂きますので、よろしくお願いします

私は真空管が好きで、送信機や受信機を何十台か趣味として製作して楽しんいます、制作内容を掲載していますので下記のアドレスを是非アクセスして見て下さい
http://mamegoro6.jalbum.net/ja0bzc/

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FT-101E トラッキング調整 をしてみる

何気に、7MHzを聴いていた所、大先輩の矢花氏がオンエアしていたのであった
呼んで見ようとファナル調整をした所、その周波数でPLATEつまみを回してもDIP点が出ないのである
そんなことしている間に、呼出の機会を失ってしまった (>_<)

他の機械(FT-101Z)で呼ぼうと思ったのであるが、これも電源入れてファナル調整していたら数分は掛かってしまうのである
終段が真空管の機械は現在の機械と異なりすぐにオンエアは出来ない、またトリマコンデンサなどの経年変化で調整点がズレることもある
前にも書いたが、ビンテージマシンを使っていると良くあることであろう

気を取り直して、久しぶりにFT-101Eのトラッキング調整をしてみることにしたのである

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<トラッキング調整調整は裏面のトリマデッキで行う>

FT-101のトラッキング調整とは、いわゆるギロチンと呼ばれる3つのμ同調を、アンテナ同調・送受信混合・トライバ同調を合わせる作業である

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<FT-101の ギロチンと呼ばれる3連μ同調ユニット>

これも慣れていると簡単に出来るのだろうが、数年に一回程度しか行わないので、イザやるとなると中々面倒である
必要にモノは信号発生器(内蔵マーカでも可)出力計そしてダミーロードである
特に100W機の場合、ダミーロードは熱容量に余裕がないと大変なことになる

FT-101Eの場合は、28.5MHz・21MHz・14MHz・7MHz・3.5MHz・1.9MHzそして7MHz・14MHz・21MHzの順番で行う
最初の28MHzはドライバ同調は無いが、この周波数できちんと調整をすることが大切である
ちなみに今回はファナルの中和も調整してみた

周波数帯毎にVFOの位置は最小値の0KHzで調整し、中点250KHz・最大点500KHzで確認をする

調整内容は各回毎に以下の内容を行う
1. PRESELECT・PLATE・LOADを合わせる
2. 受信最大点にANTトリマを合わせる
3. 送信出力の最大点にMIXERトリマを合わせる
4. 送信出力の最大点にDRIVER PLATEトリマを合わせる(28MHzは無い)

中和の調整 (FT-101Eの取説記載内容)
28.5MHz帯で上記調整がされていることが前提で以下の内容を実施する

1.28.5MHzでPRESELECT・PLATE・LOADを合わせる
2.出力を70%位に絞る
3. PLATEつまみがDIP点(IP電流が最小値になるポイント)で、出力が最大になる所に中和バリコンを合わせる

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<黄色の円の所が、中和調整バリコンである>

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<中和調整は裏面から行う 高圧部分なので金属ドライバは厳禁である>

この調整は終段管を取り替えた時に行う調整であり、以外とシビアであるので交換時以外は触らない方が安全である
ちなみに中和調整とは、真空管内のプレート・グリッド間の容量結合を、逆相の信号で打ち消すための逆相信号のレベル調整である 終段管の場合この調整がズレると異常発振などで終段管を破損することもある

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<妖しく輝く、6JS6C終段真空管>

調整後は綺麗にDIP点も出る様になったのである
我が家のメイン送信機である、まだまだ頑張って頂くのである

グリッドディップメータを分解してみる

普段現役で使用しているグリッドディップメータである
プローブコイルの取付位置によって、たまに発振しないことがあるので分解してみた

それこそ、50年モノの機械なので年季も半端ではないのである
角は塗装も剥がれ、メータも換装している

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中身は二連のエアバリコンと6AK5真空管が鎮座している
ネオン管は、テスト発振器として使う際の変調用である
変調を掛けると、ビィィ...と言う変調音がするので、信号源はこのディップメータと判断出来る
とても、素晴らしい知恵である

エアバリコンの端子が、プローブコイルのソケットにハンダ付けされている
プローブコイルのソケットは、昔懐かしいFT-243ソケットである(これが今は入手難である)

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<FT-243ソケットとバリコンの端子>

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<自分で巻いたプローブコイルとFT-243水晶>

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<FT-243水晶を挿してみたところ>
従って、FT-243の水晶発振子を挿すと、その周波数で発振するので水晶発振子の確認も出来る
ちなみに、欠品のプローブコイルを巻くときにプラグ用として、調子の悪いFT-243水晶を分解して下部を切ってソケットとして使用している

<FT-243水晶まで頂戴した大先輩の矢花氏には感謝の念が絶えないのである>

今回はこのソケットの端子の嵌合が甘くなってプローブコイルとの接触不良が偶に起きるようなので、接点を軽く磨き、バリコンとの端子を再ハンダしてみる

まだまだ、このグリッドディップメータには現役で活躍して頂くのである

ビンテージマシン を使う メリット と デメリット

今更、何で古い機械を使うの?  それって殆ど粗大ゴ○でしょ と聞かれることがある
自分自身への自問を含めて、メリットとデメリットをまとめてみた

ここで言う、古い機械とは1980年以前の機械としておく
何故1980年以前なのかは私の個人的な嗜好による所が大きいのであるが、1980年位までがVFO搭載機が販売されていたからである
VFOからPLLへの変遷は、別次元の周波数安定度と送受信周波数の直読による操作の利便性が大きく向上した
更に、いわゆる’マイコン’制御により周波数のメモリやスキャンなどの多機能化も大幅に進んだ
従って1980年代後半の機械は、整備さえされていれば現代でも十分に使用出来る操作性を持っている

しかしながらである
趣味で使用する機械なので、自分の思い入れは大きいと思う
その昔、憧れていた機械を使ってみたいとか、あの頃の操作感が懐かしいとか色々とあると思うのである

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<FT-101E(上) FT-101ZSD(下)  同じ名前だが異なる別マシーン 1970年代の憧れマシンであった>
この辺は、オールドカーの趣味と似ているのではないだろうか
オールドカーも、現在のクルマからすると、エンジンを始動するのにチョークレバーを引いたり、窓だって手動で開け閉めしたり、走る際には常に水温等に気を配ったり、燃料にはバルブを保護するために有鉛ガソリンを入れたり、相当の手間がかかる
メンテナンスも、整備工場真っ青の設備を自分で保持してメンテナンスをしている人もいる
それでも自分の思い入れのあるクルマで走ることが喜びなのであろう

初代セリカ

<懐かしのセリカ 1970年代の憧れた旧車である>

古い無線機も同じで、VFOのQRH(送受信の周波数変動)や送信時の同調調整、自分の発射している電波の質など運用時に気にすることは多い
極めつけは不具合時の対応であり、メーカ修理は殆ど期待出来ないし、修理可能な業者にお願いした場合は結構な金額になったりする
そもそも、当時の設計者も40年以上も使われるなんてことは考えもしなかったと思う

さて、前置きが長くなったがメリット・デメリットを整理してみたい

メリット
1.思い出(思い入れ)がある機械を使える
2.機械のデザインが好き
3.それを持つことで優越感を味わえる
etc..

デメリット
1.機械自体の信頼性が乏しい
2.操作が面倒で機能が少ない
3.真空管使用機種は電源投入から運用まで時間がかかる
4.変更申請に保証認定が必要
5.メーカのメンテナンスを殆ど受けられない
6.純正補修部品の入手が難しい
7.運用とメンテナンスはそれなりの知識・技術が必要となる

正直言って、運用面だけ考えるとデメリットの方が多い
ビンテージマシンを使って、メジャーコンテスト等で上位を目指す等は厳しいと思う
最新の機械は、最新の技術を駆使されて開発されているので、操作性・選択度・感度・混信対策・不要輻射などの基本性能は比べるまでもない

逆に考えると、普段はそんなにシビアなことに勤しんでいる機会は少ないと思うのである

のんびりと、自分の気に入った、思い入れの深い機械で、遊ぶのも趣味としては悪くはないと思う
私も、まだまだ駆け出し者であるが古い機械を楽しんで行きたい1人である

このブログも、古い機械を楽しむ方々のコミニケーションの場となることを目指しているのである

今後も皆様のご支援をお願いいたします

TS-700GⅡ の キャリアバランス 調整

件のTS-700 GⅡである
いわゆる、キャリア漏れを測定してみた
調整前は10dB程度(10W出力で1W程度のキャリア漏れ)で、とてもSSB送信機としての体を成していないのであった

測定は、USBモードで1.5KHzの正弦波を入力させた状態で、キャリアと信号波の電力比を測定した

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<調整後のキャリアと信号波 中心が1.5KHzの信号波 左右の山は左がキャリア分[右はイメージ]、信号との信号差は約45dB>

昔の機械では、SSB信号はDBM(DoubleBalancedMixer)と呼ばる回路に、キャリア信号と音声信号を入力し、一旦AM信号からキャリア分を除去した信号を生成する
その後で、2.4KHzの帯域フィルターを通して、片方だけの側波帯を通過させることで、SSBの信号を生成している
(最近の機械はDSP処理で信号を生成している機械もある)

TS-700の場合IF周波数が10.7MHzであり、USBのキャリア周波数は10.685MHz・LSBのキャリア周波数は10.715MHzとなっている
これは、USBとLSBそれぞれに帯域フィルターを用意出来れば、USB・LSBそれぞれにキャリアを用意する必要は無いが、帯域フィルタは高価であるためUSB・LSBで帯域フィルタを共用する知恵である

10.7MHzのキャリアで音声信号帯域が0.3K~2.4KHzの場合、USBの側波帯周波数は10.703MHz~10.724MHz・LSBの側波帯周波数は10.697MHz~10.676MHzになる
教科書だと2つの側波帯の山が描かれており、教科書的に考えた場合それぞれの側波帯周波数の中心を1.5KHzとした場合、10.715MHzと10.685MHzの2つの帯域フィルタが必要になる
逆の考え方で、USBとLSBのキャリアを切換える方式だと10.7MHzを中心周波数とした帯域フィルタが一つで済むのである

SSBの調整ポイントは、帯域フィルターに合わせたキャリア周波数の微調整キャリア成分の除去である

キャリア周波数の微調整は、帯域フィルターの経年劣化やバラツキで中心周波数等が若干ずれている場合に帯域フィルターの特性に、キャリア周波数を合わせこむ調整である
この調整がズレていると、送信音に違和感を感じる
具体的な調整方法は、音声入力に0.3KHz~2KHzの入力でほぼフラットな送信出力になる様にキャリア周波数を調整する

キャリア成分の除去については、DBM回路のバランス調整でありキャリアバランス調整とも呼ばれる
TS-700の場合はGenerator基板のトリマコンデンサと半固定抵抗の相互の調整を行い、残留キャリアが少なくなる様に調整する

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<白丸がUSBの残留キャリア調整箇所>

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<ちなみに、トリマコンデンサは経年変化で調整不可となっており交換>

私みたいな素人は慣れていないため、結構面倒で時間も掛かってしまうが、手慣れた人は手早く作業が出来関心してしまうのである

老婆心ながら、調整箇所はしっかりと確認すべきである、間違って別な箇所を弄ってしまうことの無いように十分な注意が必要である

 

昔の4pinマイクアダプタを作ってみる

本当に今更ながら、昔の4pin仕様のマイク変換アダプタを作ってみた
私の所にある1970年代の機械たちは、八重洲製が2台とその他2台であり、すべて4pinのマイク端子は八重洲仕様に統一してある

先日、件のTS-700GⅡが到着したのであるが、昔のTRIOの機械で使えるマイクが無いのであった
送信調整ではマイク端子にワニ口クリップで、発振器から信号を入力して計測していたが、実際の声を入力する手段が無い

1970年代の頃は4pinマイクが主流であり、モービル機までが4pinのマイク端子を備えていたのである
只、この頃は無線機自体のマイク入力のインピーダンスが従来の50KΩから600Ωに切り替わる頃だったので、マイク自体の出力インピーダンスが50KΩと600Ωの切替え式も多く存在した

まぁ冷静に考えて見ると、マイクの物理的な形状は全く同じなのに、動作しないのは複雑なことであった
我が家でも、同じ八重洲製なのに、FT-101Eは50KΩのマイク・FT-101Zは600Ωのマイクである

で、件のTS-700GⅡは600Ωのマイクなので、FT-101Zで使っているマイクと共用出来そうである

けれど、いちいちマイクコネクタのハンダ付けを変更するは、面倒極まりない
そこで、本当に今更ながらYASEUとTRIOの4pinマイクのアダプタをでっち上げてみた

マイクコネクタ
<YAESU と TRIO マイク端子比較>

図を見ていると、単に右に90度回転させると、端子が一致することに気付いたのである
この手のアダプタに手間を掛けたくないのと、シールド付きの4芯線の手持ちがないので
メスコネクタとオスコネクタを90度回転させてハンダ付けして、でっち上げたの下記の写真
メスコネクタの金属部をマイクのグランドに接続している

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<昔の機械用 YAESU→TRIO マイク変換アダプタ>

とりあえず問題無くは動作している

その後マイクの高機能化(UP-DOWN等)により、マイクコネクタの端子数は増えて専用化が進む
近年ではコンピュータ用RJ-45モジュラー端子となっている
いずれにしても、専用マイク以外はそのまま使えないことが多いのである
(アダプタも販売されているが....)

たかがマイク、されどマイクである 21世紀になってもやっぱり変わっていないと思うのであった