新スプリアス規定の技術的概要

前回に続き、今回はアマチュア局の新旧スプリアス規定の技術要件の概要について書いてみた
詳細は個々に総務省資料を確認して下さい

1. スプリアス発射の定義

必要周波数帯外における一又は二以上の周波数の電波の発射であつて、そのレベルを情報の伝送に影響を与えないで低減することができるものをいい、高調波発射、低調波発射、寄生発射及び相互変調を含み、帯域外発射を含まないものとする。

なんのこっちゃ..?? なのであるが早い話’ 帯域外発射’を含まない周波数成分のことである

2.帯域外発射とは

必要周波数帯に近接する周波数の電波の発射で情報の伝送のための変調の過程において生ずるものをいう。

これは例えばSSBの帯域幅は3KHz(電波法では6KHz)でなので、その帯域外に放射される周波数成分のことである
具体的に7.1MHzの場合7.097MHz~7.103MHzが電波法として帯域とされる、それ以外の近接に発生する周波数成分のことである

3.旧スブリアス規定の規制概要

・30MHz以下
50mW以下で平均電力の40dB低い値 (電力の1万分の1 *100Wの場合10mW)

・50MHz以上440MHz以下
1mW以下で平均電力の60dB低い値(電力の100万分の1 *100Wの場合100μW)

・1.2GHzを超えるもの
平均電力が10ワット以下の送信設備は、100μW以下
・アマチュア局では帯域外発射の規定が無い

スブリアス規定改正

<総務省の資料抜粋 帯域外発射について記載>

–新スプリアス規定の概要–

1.帯域外発射を定義し、この帯域での規制が追加された
帯域外領域を帯域幅の±2.5倍の幅として、その領域への不要輻射を規制

上記の7.1MHzのLSBの場合、7.9925MHz~7.1075MHzまでが帯域外領域となり、その帯域への放射が規制される (スプラッタはダメですよ)

2.測定時の変調状態が規定され、変調状態で測定される

今までは測定時の変調の規定は無かったが、新スプリアス規定では変調時の不要輻射が規定されているので、実使用状態での高調波はNGとなる

この部分がフォーカスされて、旧規格品は使えないとされる事が多いが、冷静な判断が必要なのではないだろうか?

3.不要輻射電力改定

a. 30MHz以下
43+10 log (PEP)又は50dB以下いずれか小さい減衰量
(100Wの場合43+20=63dB  = 50μW) 旧規定の1/200となる

b.上記以外
43+10 log (P)又は70dBcのいずれか小さい減衰量。
(100Wの場合43+20=63dB  = 50μW)だが、70dBcの方が小さいので 10μW) 旧規定の1/10となる

4.測定ポイント
アンテナの入力部分と定義 不要輻射対策についてはバンドパスフィルタ等での対策が可能となる

5.測定の周波数範囲

a.下限周波数 300MHzまでの場合は測定下限周波数は9KHz、300MHz以上は測定下限周波数は30MHz

b.上限周波数 100MHzまでの場合は1GHz,100以上300MHz未満は10倍、300以上600MHz未満は3GHz、600以上5.2GHz未満は5倍となる

HF機であっても9KHz~1GHzまでは測定が必要となり、430MHz機は3GHzまでの測定が必要となることである

6.新スプリアスの対応ポイント

・帯域外領域への対策について

帯域外領域は無変調での測定となる、周波数ミキサーの周波数設計がきちんしていれば問題なのではないかと思われる

・不要輻射電力改正への対応

スプリアスも旧規格より厳しい値となっている 30MHz以下で-23dB(1/200)となり、それ以外で-10dB(1/10)となる
帯域外領域以外の対応についてはアンテナ入力部分での測定なので、フィルターでの対策は可能と思われる

測定は1年未満に校正されたスペアナが必要であり、U/V機の場合は3GHz対応のスペアナが必要となる
この部分はアマチュア局が自分で測定した場合にどの様に適応になるのかは不明、何らかの測定結果を元に保証認定か?

いずれにせよ技術的な概要は理解が必要であり、技術要件から客観的に対策を検討すべきかと思うのである

単なる予想だが暫くすると各バンドのバンドパスフィルタが沢山発売されて、最初のリグの買換え騒ぎに続く対策需要喚起が始まる可能性もある

慌てず騒がずに、2017年11月30日までに今のビンテージマシンを追加申請すれば、5年間は使えるのである

2016/01/23 一部修正

2017/03/12 一部修正

 

気になる機械その1

アルインコさんの、デジタル変調ユニットである

4_EJ-47U_01

<デジタル音声変調用ユニット EJ-47U>

この基板はアルインコさんのトランシーバーに組み込むことで、デジタルの復変調が出来るオプションユニット
何故に気になるかというと、このユニットを入れたトランシーバー同士のみ交信が出来る点で、変調方式はGMSKと呼ばれるデジタル変調方式である

元々MSKと呼ばるデジタル変調方式は、占有帯域を狭くするために周波数変調でのシフト量を少なくするために考案された方式であり、その成り立ちは古い
その後、高調波成分を効率的に落とすフィルターと、信号変化のシフト時の周波数変位をゆっくりと変位させるる事で、帯域を狭めた方法がGMSKだそうである

GMSK変調での通信実験用に、オプションで販売されているのである

その昔、パソコン通信で使用したモデムが、QAMと呼ばれる位相差と振幅差を組合わせたものだった
位相と振幅の組み合わせで、16値・64値・256値等の種類があったが、組合せ値が上がると変調速度は上がるが、高品質な回線が要求された
パケット通信もQAMであった

デジタルでの通信の場合、相手先が同じ方式でないと通信出来ない
このユニットを付けると、通信相手が特定出来る素晴らしいユニットである

当然、総合通信局ではこの変調のモニタはしていると思うので、これを使っての違法行為は当然出来ない
けれど、これを使った交信をモニタ出来るアマ局は限られるはずである

これはこれでニッチマーケットをきちん意識している、アルインコさんのマーケティングは素晴らしいと思う

お空で熱弁をふるう相手がいれば、私も個人的に2セット欲しくなってくるのである

ちなみに、自作でのデジタル変調は、現在免許がかなり厳しいらしい
昔に自作デジタル変調を色々と妄想したのであるが、その辺りの価値を追求するとケータイの方が遥かに便利である

逆に、JT65などの低変調速度で到達距離を伸ばす技術の方が、アマチュアのデジタル技術としては面白いし健全だとは思う

JT65は素晴らしいです

 

懐かしき2716

机の引き出しを整理していたら、何と懐かしき部品が出て来たのであった
昔懐かしきEP-ROMである

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<富士通製の2716 懐かしい>
紫外線に窓部分を当てる事によって記録された情報を消去して、再度書き込むことが出来る
当時はROM WRITERとROM ERASERはセットで、組込み系の仕事場には必ず置いてあったものである

この2716は8bit幅のデータが2K番地まで記録出来る読出し専用メモリ(ROM)であり、8×2048で16Kbitの容量である
27**と言うシリーズの**は記録出来るビット数の事であった

当時は、CPUとしてZ80が全盛期の頃であり、8085や6800などのシステムも存在していた
いわゆる、マイコンと呼ばれた世代である
プログラミング言語は殆どアセンブラであり2Kbyteの空間にどうやって、コードを押込めるか悩んだものである
(この後すぐに2732や2764が実用化されたので、一時的にサイズ不足は解消されるのであるが、その分仕様が膨らむので結局、コード圧縮の仕事は無くならなかった)

今やEP-ROMを書くことも無くなった
マイクロコントローラにはフラッシュメモリが搭載され、そのサイズも大きくなっている
Raspberry Pi等のワンボードからすると、隔世の感である

妄想としては、Z-80CPUや8255などを集めてワンボードを作ったら十分に懐かしさを味わえる
70年代終盤から80年代前半のシステムであろうとも、手間は一緒…いや今以上に大変かもしれない
アナログ系のものは古い機械でもフォーマットが変わらない限り使えるが、デジタル系の古い機械は
単なる産廃である…

この2716は今現在、どの様な使いみちがあるのだろう

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<ガラスパッケージが時代を感じる 昔は高価な部品だったのである>

 

TS-700GⅡ再度のFM復調確認

前回のFMユニットのディスクリミネータを交換して以来特に問題は無かったのであるが、SSGが入手出来たので正規の信号での復調を確認してみた

サービスマニュアルを見てみると、1KHz(ナロー)デビエーションの145MHzの信号でFM-IF-UNITのT3,T4を音声出力MAXにすると記載されている

まずはオシロを音声出力に接続して、SSGの信号をアンテナに入力する

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<調整箇所はいつものFM IF UNIT>

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<復調は上側と下側もほぼ対象で問題ない、歪を確認しながらMAXに調整する>

SSG(標準信号発生器)があると、必要な周波数と変調と信号強度を即座に設定出来る、とても便利であることを再認識である

また今回確認中に、CENTERメータ切替と間違えてSENDスイッチに触れてしまったのであった

SSGの保護回路が瞬時に働き、出力が表示’OFF’となり、警告アラームが鳴るのである

一瞬、壊したか? と焦ったのであるが、復帰処理で問題無しである

今まではSSGに外部から信号入ることは無いと、多寡を踏んでいたのであったが、身に沁みて保護機能の有り難さを知ったのであった

(やっぱり、私もやらかしてしまったのである)

SSGの保護機能の動作確認も同時に行った、FM復調確認であった

 

昔の同軸切替器の挿入損失を測ってみた

最近、ヒマがあればそこいら辺のモノを測って遊んでいるのである
今回は、昔の同軸切換器である

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<測ったモノはコレ Mコネクタなので高い周波数でのロスの原因はコネクタかも…>

 

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<ダイキャストのキャビティ構造である>

実際測ってみたが、600MHzで約-2dB程度、430MHzで-1.5dB程度、150MHzで-1.5dB程度、50MHz以下で0.5dB以下って感じであるHF帯では十分に使えそうであるが、U/Vだとちょっと厳しい感じである

*もしかして、この切替器は清掃が必要なのかも…
特に400MHzからの落ち込みは、M型コネクタの特性が足を引っ張っていると思う

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<1dB/100MHz  0.1MHz~1Gまで手動スイープした画像 >

いつもの通り、1MHzステップの手動スイープで特性のエンベローブはピークホールド機能で記録したものである

SSGがあるとこんな遊びも出来て大変楽しい
(こんな遊びをしているとTG付きのスペアナが欲しいのであるが、まだまだ我慢)

TS-700GⅡ の 感度

いままで余り気にしたことが無かったが、40年選手のこの機械の感度はいかほど?
確かに最近の機械と比較すると、なんとなく感度は悪いような気がする

交信は十分に楽しめるのであるが…

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スペックは以下の通り記載されている
FM Less then 1μV for 26dB S/N

うーん、今まで気にしたことが無かったので、解釈はノイズとの差が26dB以下、FM なので信号が聞こえればOKという意味ななのだろうか?   その時の電圧が1μV以下と解釈したのであった
ちなみに、その電圧値は解放端なのか終端なのか、うーん解らない

とりあえず1.0μV(PD)でFM変調信号を入れて変調音が聞こえればOKという意味でとらえてみたのである
(どなたか間違っていたら教えて下さい)

SSGで145MHz、1KHzのFM変調、1μVを出力してみた
結果は、ザラザラ感たっぷりであるが、とりあえずは変調を確実に確認出来たのである

と言うことは、これはこれで仕様の範囲なのであろう

ちなみに、そこら辺のPLL機で同じ条件で受信すると、きれいに復調するのであった
同じレベルまで10db位の差があったのであるが、こんなものであろう

普通に交信は問題ないのである、10dBのアッテネータ入りと思えば気持ちもすっきりである… やっぱり昔はこんな感じだったのである

そういえば、昔この機械向けの本体内蔵プリアンプが売ってて、ローカルが俺のマシンはスペシャルと騒いでいた記憶がある

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<この機械も Sメータの補正をしたい>

 

ダミーロードのリターンロス を測ってみる

折角リターンロスブリッジをお借りしたので、まずはダミーロードの測定である
このブリッジは測定周波数200MHzMAXと記載されているので200MHz以上は誤差を含むと思われる

SSGの出力を-20dBとして、測定端子オープン時の電力値をスペアナの0dB基準点に合わせる
私のスペアナはTG(TrackingGenerator)なんて高級な機能は無いので、スペアナのピークホールド機能とSSGのマニュアルスイープである
時間はかかるが、十分である

まず標準ダミーロードでの特性を測ってみた

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<普段の標準ダミーロード RL40dB>
50MHz以下はリターンロス40dB程度である
250MHz付近で、リターンロス32dB程度である

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<写真の中点が250MHzである 必殺SSGのマニュアルスイープである>

次に一般に販売されているダミーロードを測ってみる

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<普通のそこら辺に転がっている、ダミーロード>

50MHz以下はリターンロス32dB程度である
250MHz付近で、リターンロス27dB程度である

430MHzでも十分な性能である、これからもガンガンと電気を熱に変換してもらうのである

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<写真の中点が250MHz>

ダミーロードも弄ると、色々な特性が有って楽しいのである

またSSGが一台あると遊びの幅が広がりるのである、この手の遊びにはオオスメの一品である

リターンロスブリッジ を試してみる

いつも大変お世話になっている、大先輩の矢花氏から、これ使ってみて!!と小包が届いたのであった
中身は、リターンロスブリッジ
訳ありだけど200MHz以下なら使える、とのことで早速有り難く使わせて頂くことにする

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<届いた、リターンロスブリッジ>

前回に、標準信号発生器(SSG)が届いているので、試験環境は大丈夫である

まずは、標準ダミーロードを測ってみた
145MHzでリターンロスの計測値は37dBである VSWR換算で約1.03である

次に、ハンディ機についている、ちっちゃなホイップアンテナを測ってみる
143.9MHzでMAXの17dB VSWR換算で約1.33である
146MHzで12dBのVSWR換算で約1.7である

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<とりあえず測ってみた 3BANDのハンディホイップ>

今回は、時間が取れていないのでお手軽ハンディホイップを測ってみたが、今度HFアンテナをゆっくりと測ってみたい
とりあえずは、50MHz以下のリターンロスも測れるようになったのである

だから何なの? と言わないで欲しい
とりあえず。今は実力値が判るだけで幸せなのである
私は単純なのである

AMの波形 を改めて見てみた

先日届いた、標準信号発生器の動作確認ついでにAMの波形を見てみた

いまさらAMであるが、されどAMでなのである
実際にAMの送信機を作ってみると、深い変調で歪無しで出すのは以外と難しいのである
(私には…)

当然のことながら、この手の技術は枯れている(成熟している)いるので、メーカ製の機械であれば何ら問題は無いのである (出力は一般に1/4となるが)
改めて、標準信号発生器の波形を観測して参考としたいのであった

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<キャリア信号 電圧値は約0.7V>

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<50%変調のAM波形@400Hz  電圧値は約1V>

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<100%変調のAM波形@400Hz  電圧値は約1.4V>

またAM変調の電力についてであるが波形を注意深く見ると、100%変調場合ピーク時の振幅がキャリア電圧の倍となっている
従って電力であれば4倍となる

通常の100W機であれば、最大電力はどの送信モードでも100W以上は出ない様になっている
従ってSSBの場合は尖塔値(ピーク時)の電力が100Wで問題ないが、その機械でAMを送信すると25Wとなる
AMで100Wの出力を出す場合は、キャリア主力が400W以上のアンプが必要なのである

今更な技術かも知れないが、変調率を維持しながらピークを歪ませずに、綺麗なAM信号を生成するにはノウハウが必要と思う

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<標準信号発生器の変調設定バネル>

SSG が到着したのでお試し

SSG(標準信号発生器)が到着したのであった
この機械は、100KHz~2GMHzまで信号を発生することが出来、AMとFMそして位相変調が掛けられるのである

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<到着した標準信号発生器>

SSGは、特に微弱信号の発生には必需品である
普通の発信器や送信機の等を使う場合、どうしても漏れ電波で微弱信号の測定が難しい事が多い

特に、受信機の感度確認や、トラブルシュートをする時はとても重要である

私も、ハンディ機を缶の中に封入したりしたのであるが、私の技術では中々うまく行かなくなった

また正確なアッテネータによる出力レベルの確度を考えると、SSGは必須となってしまう

いかんせん、個人の趣味で使うものである
本来であれば、校正機関に校正してもらったあとに、使用するのが前提である’標準信号’であるが
そんな財力は無いので、自家で測れる範囲で動作の確認を行っている最中である

とりあえず確認してみた所、基本的な動作はOKである

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<1GHzでの出力レベル確認 良好である>

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<FM変調の確認 デビエーションは2.5KHz>