TS-700GⅡでの運用報告

一通りの整備が終了し、TS-700GⅡにて運用をしてみた
そもそも、TS-700GⅡは1975年の発売で、現在(2015年)から40年前の機械である
当時は開局して2mバンドからQRVする局が多く、2mバンドはメインストリートであった
多くの屋根の上にも、2mのスタックアンテナが上がっていた記憶がある
当時の私のイメージは、スタックアンテナにTS-700と言う組合せが、2m高級局って感じであった
なにせ、SSBも出れるオールモード機である 当時としては高級感抜群であった

当時はモービル機に2段GPの組合せでQRVしている局が多かったと記憶している
私も近くOMから譲ってもらった12チャンネルのモービル機と1/4λホイップが開局時の設備である

さて当時の記憶をもとに、TS-700GⅡを現代で運用してみた

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<懐かしのTS-700GⅡ >

FMでの運用であるが、メインチャンネルワッチは特に問題はない
以前に書いたが、FMの運用は144MHz帯と145MHz帯を跨いでいるため、例えば144.96MHzから145.08MHzへの移動が大変面倒である
現代の機械であれば周波数ツマミを6ステップを回せば済むことであるが、VFO機の場合はバンドを144MHzから145MHzに切り替えて、VFOを0.96MHz~0.08MHzまで、ほぼ端から端まで回転させる必要がある
バンド内のワッチも面倒と言えば面倒である、それ以外は時に問題無く交信出来る

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<144,145MHzは切替が必要である>

受信音は中低域が太い独特の音質である、この機械はの場合は内蔵スピーカでも十分な音質である
感度は現代の機械と比べると若干低いが、それもシビアの条件以外では問題は無い範囲である

固定チャンネルの増設については、VFOの周波数を水晶発振子で代替する方式である
従って水晶で対応出来るのは144.00MHz~146.00MHzの範囲であり、PLL機みたいなバンド外の対応は、TS-700では出来ない

呼出周波数の水晶は有っても良いと思うので、手頃に入手出来れば欲しい一品である
(特注してまで必要なモノではない)

SSBの交信についての操作性については、現代の機械と差異は無い
TS-700の場合はVFOの操作感が若干ゴリコリ感があるが、私はメカ感が有って良い感じと思う
ギア比の問題があって、SSBのゼロインは若干シビアではある
SSBの音質は、ニュートラルな感じである
感度については、FM同様現代機と比較すると若干低いので、シビアな運用は現代機を使用するべきであろう

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<メカ感のある、VFOの操作感覚>

 

TS-700GⅡ再度のFM復調確認

前回のFMユニットのディスクリミネータを交換して以来特に問題は無かったのであるが、SSGが入手出来たので正規の信号での復調を確認してみた

サービスマニュアルを見てみると、1KHz(ナロー)デビエーションの145MHzの信号でFM-IF-UNITのT3,T4を音声出力MAXにすると記載されている

まずはオシロを音声出力に接続して、SSGの信号をアンテナに入力する

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<調整箇所はいつものFM IF UNIT>

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<復調は上側と下側もほぼ対象で問題ない、歪を確認しながらMAXに調整する>

SSG(標準信号発生器)があると、必要な周波数と変調と信号強度を即座に設定出来る、とても便利であることを再認識である

また今回確認中に、CENTERメータ切替と間違えてSENDスイッチに触れてしまったのであった

SSGの保護回路が瞬時に働き、出力が表示’OFF’となり、警告アラームが鳴るのである

一瞬、壊したか? と焦ったのであるが、復帰処理で問題無しである

今まではSSGに外部から信号入ることは無いと、多寡を踏んでいたのであったが、身に沁みて保護機能の有り難さを知ったのであった

(やっぱり、私もやらかしてしまったのである)

SSGの保護機能の動作確認も同時に行った、FM復調確認であった

 

TS-700GⅡ の 感度

いままで余り気にしたことが無かったが、40年選手のこの機械の感度はいかほど?
確かに最近の機械と比較すると、なんとなく感度は悪いような気がする

交信は十分に楽しめるのであるが…

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スペックは以下の通り記載されている
FM Less then 1μV for 26dB S/N

うーん、今まで気にしたことが無かったので、解釈はノイズとの差が26dB以下、FM なので信号が聞こえればOKという意味ななのだろうか?   その時の電圧が1μV以下と解釈したのであった
ちなみに、その電圧値は解放端なのか終端なのか、うーん解らない

とりあえず1.0μV(PD)でFM変調信号を入れて変調音が聞こえればOKという意味でとらえてみたのである
(どなたか間違っていたら教えて下さい)

SSGで145MHz、1KHzのFM変調、1μVを出力してみた
結果は、ザラザラ感たっぷりであるが、とりあえずは変調を確実に確認出来たのである

と言うことは、これはこれで仕様の範囲なのであろう

ちなみに、そこら辺のPLL機で同じ条件で受信すると、きれいに復調するのであった
同じレベルまで10db位の差があったのであるが、こんなものであろう

普通に交信は問題ないのである、10dBのアッテネータ入りと思えば気持ちもすっきりである… やっぱり昔はこんな感じだったのである

そういえば、昔この機械向けの本体内蔵プリアンプが売ってて、ローカルが俺のマシンはスペシャルと騒いでいた記憶がある

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<この機械も Sメータの補正をしたい>

 

TS-700GⅡ の FM検波トランス の交換

件のTS-700 GⅡであるがFM音声の歪感について対策を実施した
TS-700 GⅡのFM検波は、第2IFである455KHzをレシオ検波で音声を出力している

レシオ検波は同調点の異なる2つの共振回路にFM信号を通すことで、周波数変位分を音声に戻すのである
この機械では、FM IF UNIT内のT3,T4がレシオ検波専用コイルとなっており
このコアを調整する事で音声検波を調整している

(このコイルはディスクリミネータと呼ばれる部品で、近年ではセラミックの無調整が殆ど)

不具合の内容は音声の歪であるが周波数変位の片方が動作していない
とりあえずの音声にはなるが、アンプで言う所でのB級増幅と同じ感じとなっている

元々ドナー用にTS-700無印を入手していたので、今回はTS-700無印からFM検波コイルを移植してみる

本来はT3,T4と2個セットで交換するが普通と思うが、今回は切り分のためT4から交換を行ってみた

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<TS-700GⅡのFM IF UNIT 赤丸が交換したT4>

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<レシオ検波専用コイル T4>

交換後の結果はビンゴである
このT4の不具合である、交換後復調の調整を行った所
音声のひずみ感は無くなり復調はバッチリである、TS-700独自の太い受信音が戻って来たのである

この修復によって、センタメータの振れる範囲も正常となった(両側の位相分が正常出力されているので、当然ではある)

再度Sメータの調整を実施後に、センタメータの調整を行ってみる、センタメータの振れ幅が正常となっている

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<TS-700GⅡのセンタメータ>

これで件のTS-700GⅡは、ほぼ完動状態となったのである 部品取りしたTS-700無印も復帰を考えたい

 

 

TS-700無印とTS-700G2の違い

TS-700(無印)は1973年に発売された145MHz帯のオールモード機である
その2年後にTS-700GⅡがマイナーチェンジとして発売されている
見た目の外観は大きくは違わないが、それなり変更がなされている

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<TS-700無印の操作パネル>

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<TS-700GⅡの操作パネル>

まずフロントバネルのノブである
TS-700   TS-700GⅡ
RF GAIN → AF GAINと同軸になり、下段右に移設
出力調整無し → 上段左に新設 (TS-700のRF GAINの位置)
SQUELCH → 下段中に移設し、左回し切りでCAL(マーカ機能)SWとなる

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<TS-700無印のスイッチ>

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<TS-700GⅡのスイッチ>

 

スイッチ類の変更は以下の通り
TS-700   TS-700GⅡ
NB → メータのS表示とセンタメータ切替
CAL → SQUELCHと共用になり、この位置はNBとなる
RIT → 変更無し
SPOT → FMのバンド幅切替 WIDE/NARROWとなる

リアバネルは、内部の20VDC/DCコンバータ専用のヒューズがTS-700 GⅡで廃止となる

TS-700無印とTS-700G2の運用上の違いのポイントは以下の4点である
・TS-700無印は出力を絞ることが出来ないTS-700GⅡは0.5W程度まで段階的に絞れる
・CAL(マーカ機能)はTS-700無印は1MHzHz単位、TS-700GⅡは100KHz単位でのVFO校正となる
・TS-700GⅡはFM時にメータをセンターメータして使用出来るが、無くても問題はない
・FMのWIDE/NARROW切替、現在はNARROW固定なのでTS-700無印でデビエーションの調整がされていれば問題はない
回路構成については大きな変更は無いが、各ユニットの互換性が無いユニットがある
単純に相互のユニット転用は出来ないと考えた方が無難であり、回路図とユニット番号を調べてからすべきである
オプションや、水晶はそのまま転用が可能である

TS-700無印も、きちんと整備すれば使えそうである

FM変調 の デビエーション調整 をしてみる

FM変調のデビエーションとは、音声を入力した時の周波数の変動範囲のことである

デビエーション調整がきちんとされていないと、いわゆる’変調が浅く’なったり、場合によっては隣接のセパーレーション周波数に混信することになる

145MHz帯のFM変調の占有周波数帯幅は16KHzであり、20KHz毎に周波数を使用することにより隣接周波数の混信を防ぐことが出来るが、デビエーション調整がいい加減だと妨害を与えることになる

実際には、雰囲気でデビエーションの調整を弄って深くしている人は多いかも知れないが、この調整がいい加減だと、隣接周波数に混信を与えることになるため確認が必要である

本来は、このデビエーション調整には専用のデビエーションメータが必要となる
残念ながら私は所有していないので、スペクトルアナライザで簡易調整してみた

最初に、マイク端子に一定の音声信号を加える 私は低周波発振器で1.5KHzをマイク端子に入力する
無線機のマイクゲインを中央値にする
当然のことながら、アンテナ端子にはダミーロードと-40dB程度のCMカップラや減衰器を通して測定器に接続する
該当周波数を受信出来る他の受信機を用意する

送信して低周波発振器の出力を上げていくと、ある一定以上のポイントで変調が頭打ちとなる
(この回路が試験勉強で覚えたIDC回路と呼ばれる変調信号のリミッターである )

変調が頭打ちのポイントで、スペクトラムを計測する

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<TS-700GⅡで、上記条件で測定してみた所>

スペアナでみると頂点の2つのピークの間が、現在の周波数偏移である
この間隔が5KHz以内なるようにデビエーションを調整する
占有帯域幅についても、-50dBのポイントで20KHzとすれば問題無いと考える

一旦、件のTS-700GⅡを調整してみたのであった

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<デビエーション調整中のTS-700GⅡ>

周波数変位は規定範囲の約4.6KHzであるが、若干占有幅が広い気がするのであるが、 この程度であればローカルにも迷惑を掛けることなさそうである

 

1970年頃の部品実装とプリントパターン

件のTS-700GⅡを色々と弄っていて思うことである
この機械も1975年頃の製造と思われる

日本のプリント基板の歴史は以外と古い、戦前の昭和11年に民生用ラジオに搭載されている
1950年代以降のトランジスタ化による機器の小型化で、プリント基板は多用される
プリント基板によって、配線の品質が上がると共に生産の効率化が大きく進み、実装密度の高い商品が続々誕生したのであった

そのプリント基板なのであるが現在はその殆どが機械で生産される、実装密度も半導体に近いモノになっている
しかしその性質上、大量生産には向くが、多品種少量生産の場合は基板の共通化などの工夫が必要となる
アマチュアレベルで多くて数台とかの制作規模だと、プリント基板のアートワーク設計(パターン設計)や製造装置への設定等々のイニシャルコストも出ないと思う

さて前置きはここまでとして、TS-700GⅡの基板であるが、多分手作業で基板に部品を実装していのではないかと思う
基板のランド(部品をハンダ付けする領域)にリード部品のリード線が、きちんとパターン方向に曲げて取り付けてある
これはこれで新品時の品質を上げる当時の手法である
私が小学生の頃、親にねだって買って貰った2石ラジオキットの組立説明書にも、リードは外れない様にパターン方向に3mm程度曲げて取り付けるとか言ってあった記憶がある

只、リードを曲げて取り付けてある部品を、取り外すのは集中力と根気が必要である
この頃のアナログ機器は単層基板なのであるが、ベーク基板と呼ばれる紙フェノール基板である
問題は、修理時にプリントパターンが傷みやすいのである
更にリードを曲げて取り付けてあるので、ハンダ吸引機を使っても結局ハンダゴテを当てながら曲げてあるリードを元に戻す作業が必要になる

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<プリントパターンのハンダを除去した所 ランドに沿ってリード曲げてある>

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<部品を外した所 パターンを傷つけない様に細心の注意が必要>

この作業を雑に行うと、あっという間にプリントパターンを剥いでしまうことになりかねない
パターンにストレスを加えない様に、リードの曲げを元に戻すのであるが、実装密度の高い箇所だと、複数の部品を合わて絡げでいることもある
ハンダを除去して、該当部品が複数の部品と絡げてあると、気持ちがブルーになってしまう

ネットで検索すると、古い電解コンデンサは有無を言わずに交換とか書いてあるが、集中力と根気のなさせる技と思うのである
特に3本足のトランジスタだと更に面倒である

まだTS-700は比較的修理の作業性が高いのであるが(プローブも当てやすい)、作業性の悪い機械でこの作業を行うのはかなり躊躇してしまう
(仕事でやられている方は本当に大変かと思う)

古い機械を弄るのも、気合と根性と技能が必要みたいである

TS-700GⅡ をさらに弄ってみた

件のTS-700GⅡである
とりあえず、色々と試験して来たのであるが、FMの受信音がどうにも歪ぽいのである
USBでは気にならなかったのであるが、今回のその対策である

最初は、身近のハンディ機からFM信号を出して信号を追ってみたのであるが、いかんせん私の技量ではオシロスコープの波形で不具合箇所を特定出来ていない
(まだまだ技量と勉強不足である 殆ど言い訳であるがFM変調のSGが欲しいのである)

当初はFM IFユニットのAF出力が怪しいと思ってとりあえず、電解コンデンサを換えてみたのであった なんとなくは良さ気な感じがするが、ここも一個も容量抜けの確認は出来ていない

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<音声主力系の電解コンデンサを交換したAFユニット>

今回はAF入力段から電解コンデンサを換えてみることにしてみた
これって以外と面倒である、パターンの裏面が把握出来ていれば良いのだが、一発で該当のランドに当たらないことが多い
大きめの電解コンは楽にランドが判明出来るので比較的楽である

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<TS-700GⅡで交換した部品たち 電解コンデンサの容量抜けは一個も発見出来ず..>

という事で、今回も一個毎に外したあと、容量計で容量を計測してみた
結局明らかな容量抜けは今のところ一個も無い
只、一箇所の電解コンデンサを外した所、液漏れらしき後が有り、該当の電解コンデンサを交換した所、歪感は改善したのである

が..まだ歪感が残るのは多分気のせいなのであろう….. (まだまだ続くかな)
けれど、該当の電解コンデンサの容量は規定通りであった
これも勉強不足で何故そうなるかが分かっていない

受信音質も改善した所で、ダミーロードを使って144MHz~146MHzまで出力の確認を再度行った
145.50付近から出力が低下し、146MHz付近だと5W程度まで低下する
私はお月様まで電波を飛ばすことも無いので、このままで良いと思ったのであるが、気持ちが悪いので結局もう一度終段調整をやり直したのであった

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<もう一度再調整している所>

結果として、144MHz~146MHzまで10Wの出力は出る様になった

後は我が家の、古い機械たちの一員として活躍してもらうばかりである

 

TS-700GⅡ に 周期数カウンタ を接続してみる

TS-700に件の周波数カウンタを使ってみる

ふっとした思い付きで、件の周波数カウンタをTS-700GⅡで試してみたのである
件の周波数カウンタは、HF帯用で設計したため、表示周波数の最大値が99.999999MHzである
では、と言うことで表示を1MHz表示として実験してみた 早い話が14X.nnn,nnnMHzのnnn.nnnKHzを表示するカウンタと言う事である
TS-700のVFOは8.2MHzから9.2MHzの周波数であり、VFOの発振周波数の増分方向と送受信周波数が一致している
オフセット周波数は単純に – 8.2MHz と設定すれば、KHz帯の周波数を表示するカウンタとなるのである

TS-700はVFO出力が外にに出ていないので、実験用に分岐コネクタをでっち上げて、周波数カウンタと接続する
但し、結線はなるべく短くする必要がある

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<テスト用の分岐コネクタ>

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<分岐コネクタをTS-700GⅡに取り付けた 古い機械はスペースが有って遊ぶには最適である>

実際に使ってみると、便利である
何故なら、製造後40近く経っている機械であり、VFOの下端と上端の周波数は合わせ込んでいるが、中間値では±3KHz程度のダイアル表示との差がある
VFOのダイアル上の表示差を気にしないで、デジタル表示で正確な送受信周波数を確認出来るのは便利である

純正でデジタル直読が可能なTS-700Sとの差は、145MHz/144MHzのバンド切替えとモード切替えが、自動で周波数表示に反映され、MHz表示が3桁フルに表示されることである

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<144.64MHzを受信している所 これは便利である>
ちょっとしたイタズラと実験であるが、それなりには使えそうではある
TS-700GⅡは100KHzのマーカが付いているので、比較的VFOの校正も楽であるが、TS-700無印の場合は1MHz単位のマーカである
TS-700無印機の方が、件の周波数カウンタの利用価値は高いかも知れない

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<この周波数カウンタは測定周波数をオフセット周波数として簡単に登録出来る>

この周波数カウンタは測定周波数を、オフセット周波数として、オフセットメモリに簡単に登録出来るのである

今回はオフセットメモリの7CHに登録して使って見たのであるが、パソコン無しでオフセット周波数の登録が出来るのは便利である 誰も褒めてはくれないのでこの件だけは自分で自分を褒めることにしよう

 

 

TS-700GⅡ の キャリアバランス 調整

件のTS-700 GⅡである
いわゆる、キャリア漏れを測定してみた
調整前は10dB程度(10W出力で1W程度のキャリア漏れ)で、とてもSSB送信機としての体を成していないのであった

測定は、USBモードで1.5KHzの正弦波を入力させた状態で、キャリアと信号波の電力比を測定した

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<調整後のキャリアと信号波 中心が1.5KHzの信号波 左右の山は左がキャリア分[右はイメージ]、信号との信号差は約45dB>

昔の機械では、SSB信号はDBM(DoubleBalancedMixer)と呼ばる回路に、キャリア信号と音声信号を入力し、一旦AM信号からキャリア分を除去した信号を生成する
その後で、2.4KHzの帯域フィルターを通して、片方だけの側波帯を通過させることで、SSBの信号を生成している
(最近の機械はDSP処理で信号を生成している機械もある)

TS-700の場合IF周波数が10.7MHzであり、USBのキャリア周波数は10.685MHz・LSBのキャリア周波数は10.715MHzとなっている
これは、USBとLSBそれぞれに帯域フィルターを用意出来れば、USB・LSBそれぞれにキャリアを用意する必要は無いが、帯域フィルタは高価であるためUSB・LSBで帯域フィルタを共用する知恵である

10.7MHzのキャリアで音声信号帯域が0.3K~2.4KHzの場合、USBの側波帯周波数は10.703MHz~10.724MHz・LSBの側波帯周波数は10.697MHz~10.676MHzになる
教科書だと2つの側波帯の山が描かれており、教科書的に考えた場合それぞれの側波帯周波数の中心を1.5KHzとした場合、10.715MHzと10.685MHzの2つの帯域フィルタが必要になる
逆の考え方で、USBとLSBのキャリアを切換える方式だと10.7MHzを中心周波数とした帯域フィルタが一つで済むのである

SSBの調整ポイントは、帯域フィルターに合わせたキャリア周波数の微調整キャリア成分の除去である

キャリア周波数の微調整は、帯域フィルターの経年劣化やバラツキで中心周波数等が若干ずれている場合に帯域フィルターの特性に、キャリア周波数を合わせこむ調整である
この調整がズレていると、送信音に違和感を感じる
具体的な調整方法は、音声入力に0.3KHz~2KHzの入力でほぼフラットな送信出力になる様にキャリア周波数を調整する

キャリア成分の除去については、DBM回路のバランス調整でありキャリアバランス調整とも呼ばれる
TS-700の場合はGenerator基板のトリマコンデンサと半固定抵抗の相互の調整を行い、残留キャリアが少なくなる様に調整する

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<白丸がUSBの残留キャリア調整箇所>

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<ちなみに、トリマコンデンサは経年変化で調整不可となっており交換>

私みたいな素人は慣れていないため、結構面倒で時間も掛かってしまうが、手慣れた人は手早く作業が出来関心してしまうのである

老婆心ながら、調整箇所はしっかりと確認すべきである、間違って別な箇所を弄ってしまうことの無いように十分な注意が必要である