ビンテージマシン で アイコム社 AH-4 を使ってみる

ビンテージマシンでアイコム社 AH-4を使ってみる

注意!!
ここで記載している内容はメーカの動作保証範囲外となります
操作を誤るとAH-4を破損する可能性があります
この件についての動作検証は、読まれた方の自己責任にてお願いいたします
また著者は運用した結果については責任を負いません

<少し大げさであるが…..>
終段に真空管を使用しているビンテージマシンは、終段の後にπマッチ回路が搭載されているため空中線への適合範囲が広いのである
アンテナチューナ無しで色々なアンテナでQRVされた方も多いと思う
しかし伝送線路が50Ω系できっちりとしている現在では、ビンテージマシンでも殆どが出力インピーダンスを50Ωで運用していると思われる

さて、比較的新しい機械ではオートアンテナチューナが利用出来る
更にアンテナ直下型のアンテナチューナは様々なエレメントがアンテナとして使えるため、非常に便利である

私は狭小住宅に住んでおり、アンテナ環境はアパマンと同様でベランダの有効活用しかない
従って3.5MHz帯や7MHz帯でのフルサイズアンテナは物理的に厳しい
場所の制約でロングワイヤーとアンテナ直下型チューナの構成となってしまうのである

そのアンテナチューナであるが、私はアイコム社のAH-4を使用している
このアンテナ直下型チューナは100W(CW)までの耐入力であり、対応した無線機であればボタン一発でチューニングが取れる便利なグッズである

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<狭小住宅だとAH-4はとても重宝である>

このAH-4をビンテージマシンで使用するために、でっち上げてみたのが、このコントローラである
ポイントは対応機と非対応機の切替えスイッチであり、このスイッチを対応機側に切り替えれば今まで通り、対応機でボタン一発チューニングとなり
非対応機に切り替えた場合は定められた手順でのマニュアルチューニングとなる

 

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<TS-520Xの上に置いた AH-4外部コントローラ>

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<中身はこんな感じである>

非対応機でのマニュアルチューニングの手順は以下の通りである
①送信する周波数で送信機のチューニングを耐入力の余裕がある50Ωのダミーロードで行う
(送信インピーダンスを50Ωで送信機のチューニングをとるため)
②送信機をCWモードで10Wの出力に合わせる
(10W以上の電力でアンテナチューナのチューニングを行うと、チューナを破壊する恐れあり)
③コントローラのTUNEボタンを押下する
④SWR計でSWRが1.5以下である事を確認する
(チューニングのLEDはチューニング中に点滅するが、チューニングの成否表示はしないため)

ボタン一発の簡単チューニングから、複雑な手順を踏み更に操作を誤るとチューナを破壊する危険性のある操作が必須となる

<と言うか10W以上でチューニングをしなければ壊さないのである>

けれどビンテージマシンでAH-4が使えるのは非常に便利ではある
(ボタン一発の中で対応機はモード変更・出力制限・元のモードと出力に復帰を内部のマイクロコントローラがやってくれているのである)

冒頭にも記載したが、AH-4に未対応機を接続した場合はAH-4を破壊するリスクがある
ご自分でリスクを負える方だけ、回路を各自検索しチャレンジして欲しい

 

TS-520X (100W改造機)の 搬送波抑圧比 の確認

件のTS-520X(100W改造機)のキャリアサプレッションレベルを確認してみたのである

キャリアポイントは他の無線機で送受信を確認した所、ほぼ良好なので今回は全く手を入れていない
今回はキャリア漏れ(キャリア抑制)の確認である

まずTS-520Xとスペアナの接続であるが、件のCMカップラを使用して出力分の約-20dBのみ測定側へ電力を取り出す (勿論残りの電力はダミーロードで熱に変える)

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<CM型カップラで-20dBの電力を取り出し、更にパワーアッテネータで減衰させる>

100Wの-20dBだと1Wになるので、更に-20dBのパワーアッテネータとステップアッテネータを組み合わせる
スペアナの入力電力を-10dBm程度まで減衰させる

スペアナの耐入力は20dBm程度はあるが、当然の事ながら歪が発生してしまい何を測定しているか分からなくなる、基本は-10dBm程度と考えたい

AF信号はマイク端子から1.5KHzの信号を入力する、マイクゲインはALCが振れ始める位置とした

入力の準備が出来た所で、今回は14.2MHzでのUSBとLSB双方の確認をしてみた

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<14.2MHz AF 1.5KHz  USBのスペクトラム>

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<14.2MHz  AF 1.5KHz LSBのスペクトラム>

それぞれのキャリアレベルは-43dBであり全く問題ない範囲である、少し前までは大体の機械が-40dB以下としていたレベルなのである

もし40年間無調整でこの値なのであれば、とても素晴らしい機械である

このTS-520Xもまだまだ十分に現役で活躍出来そうな機材である

 

TS-520X のMAKER を較正してみる

件のTS-520Xのマーカ発信器を較正してみた
TS-520XはMKR-3と呼ばれる25KHzのマーカ発信器がオプションとして本体に内蔵が出来る
このTS-520Xは内蔵されていたが、この頃のVFO機は水晶発振子によるマーカ発信器が必要不可欠であった

送受信周波数の読取りはVFOダイアル外周部のゲージで読み取るのであるが、その位置をマーカで校正するのである
MKR-3は25KHzの発信器であり歪を多くした出力回路で、高調波成分を多く出力する様になっている
その高調波成分を25KHz刻みの信号を受信して、ダイアル位置を合わせるのである

周波数カウンタをMKR-3の出力端子に接続するも、上手く発振周波数を測定出来ないのであった
今回は直接、出力トランジスタのコレクタから信号を取り出しして周波数の測定をしてみた

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<TS-520Xの25KHzマーカ発信器 MKR-3>

今回のMKR-3の実測周波数は25.00109KHzであった、定格値は±1Hzなので要調整範囲であり
この場合10MHzでは436Hzのズレとなり、21MHzであれば約900Hzのズレとなってしまうのである

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<較正前は25.00109KHz>

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<較正後は25.00018KHz>
MKR-3のトリマコンデンサで調整を実施し、25.00048Hz位までトリマコンデンサで調整出来た

これ以上の調整を行う場合は、トリマコンデンサの容量を変える・インダンクタンスを挿入する・水晶を変える・の選択肢となる
今回は定格値に入っているので良しとするのである
この場合10MHzでは192Hzのズレで、21MHzであれば約400Hzのズレである

まぁ、アナログVFOのキャリブレーションとしてはOKである

ちなみに、マーカ発信器の校正は10MHzのJJY信号とのゼロビートを取ることで行ったのである (JJYも無くなり寂しい限りである)
従ってこの頃のマシンは10MHz帯が受信出来るようになっているのである

マーカ発信器はVFO機では欠かせない機能であった

FT-101E VS TS-520X その2

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<TS-520XのVFOダイアル LSB,中点,USBと3点の読取りポイント>

操作面ではTS-520はVFOダイアルの周波数表示に拘っており、-1.5kHzと中点そして-1.5Hzで周波数読取りポイントが設定されている、FT-101はそこの拘りはない
同じバンド無いでCWとSSBを交互に運用する場合は便利ではあるが、これもマーカでのキャリブレーションをどのポイントに合わせるかだけなので、個人的にはどちらでも大勢に影響は無いと思う

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<FT-101EのVFOダイアル 読取りポイントは一箇所>

PLATEノブについては圧倒的にTS-520Xは使いにくい、PLATEノブが同軸でFIX-CHと共用であるのと、ノブ位置表示が下側になっており非常に解りづらいのである
慣れれば問題は無いのであるが、初めてTS-520D/Xを使う場合は戸惑うであろう
これはTS-520S/Vで改善されている
FT-101は大体の周波数位置が表示されており、また減速機構も備わっていたので操作は快適である

VOXなどの調整はTS-520が横面に調整VRがまとめられており便利である、FT-101は上面のボンネットを開けての調整となる
後面の端子類はFT-101の方が多く、IF-OUTやアンテナトリップがあり拡張性は高い
以前にも書いたがTS-520XのSメータは秀逸でありS9以下は6dBで指針とほぼ同期している

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<秀逸なTS-520XのSメータ >

性能自体は色々と語り継がれているが一点だけ大きな違いがある
それは、プリセレクタである
FT-101はギロチン呼ばれるμ同調でコアをPRESECTノブで操作する、TS-520では同調バリコンをDRIVEノブで操作するのであるが、やっぱりプリセレクタの性能はQの高いμ同調に軍配があがる
具体的には、夜間の7MHz帯で近隣諸国の強大出力の放送が開始される場合である
TS-520Xのドライブ機能ではこの強大な電波の影響がSメータに出て来る
FT-101のプリセレクタでの目的外周波数の減衰量が大きく影響は少ない
シビアな条件ではFT-101のプリセレクタの性能が効いてくる

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<FT-101EのPRESELECT μ同調で切れが良い>

 

双方共に当時のメジャーマシンである
それぞれ設計思想が異なるマシンであるが、現在に於いても実用になるマシンである
現在の視点で双方を使い比べると楽しく遊べるし、当時の技術水準の高さを改めて実感出来ると思う

FT-101E VS TS-520X その1

全く私の主観である
この話題は40年程前に多くの方々が色々と語ったのであろう
双方共、当時のメジャーマシンである

両機種とも発売されたのは1970年代中旬の頃である
偶々、我が家に鎮座しているのがFT-101EとTS-520Xであるのであるが
TS-520Xと比較するのであればFT-101BSが適当であろう、従って比較の機能面ではFT-101BS比較をしたい

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<TS-520X と FT-101E 1970年代の代表的なマシンである>

送受信周波数はFT-101BSは160mバンドに対応している、TS-520Xはマイナーチェンジ後のTS-520S/Vで対応したのであった
送信モートではFT-101BSはAMが最初から用意されている、TS-520Xでは’SSB Transceiver’と名乗っておりAMには対応していない

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<AM モードの有無が諸元上の大きなポイント>

FT-101は元々、北米での販売を意識していたのであろう
FCC規格でのCB帯にQRV出来るポテンシャルをマーケティング的に活用したのではないかと、個人的には考えている
日本に於いても当時FT-101シリーズでCB帯にQRVしていた方々は多かったのではないだろうか?
アマチュア通信では、この頃は殆どSSB化しておりAMを使う事は無かったと思われる
従って、AMモードが必須の方は黙ってFT-101シリーズを選択したのであろう
但し搭載のフィルタはSSB用であり、AM受信の場合は音声帯域が狭くAMの受信音質は良くない
(当時AMフィルタもサードパーティから販売されており、現在はプレミア価格である)

双方共スピーチプロセッサは内蔵していないが、TS-520Xではマイクゲインのノブを引くとALCの定数を変えるDXスイッチが付いていた
これでSSBの尖頭電力リミットを軽減して少しでもパワーを絞り出すものである
(個人的には少し反則技な様な気がするが…)
双方共マイナーチェンジによりFT-101E/ES・TS-520S/Vからスピーチプロセッサが搭載される

続く…

TRIO TS-520X で周波数カウンタを使ってみる

件の直読型周波数カウンタをTRIO TS-520X で使ってみたのである

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<TS-520X に接続した 直読型周波数カウンタ>
TS-520X のリアバネルの外部VFO端子 (MTジャック)に、内蔵VFOの発振出力が出力されている (MTジャックの1pinと2pin)

TS-520SとTS-520VはリアパネルにRCAピンジャックでDG-5用にVFO出力が有る
ちなみにTS-520DとTS-520XはDG-5を接続するときにはDK-520と言うインタフェイスユニットが必要である

今回はTS-520Xへの接続なので、外部VFO端子からVFOの出力を取ってみることにした
とりあえず、付属のMT9PINプラグにVFO出力端子を付けてみた

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<付属のMT9PINプラグの1,2PINにPIN JACKを付けてみる>

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<この様に取り付けると違和感は無い このジャックがVFO出力となる>

TS-520 の送受信周波数計算はざっくり各バンド毎に表すと以下の通りである
•160m 7.3MHz – VFO発振周波数 (1.8MHz-2.4MHz)
(TS-520X,TS-520Dは無し)
•80m 9.0MHz – VFO発振周波数 (3.5MHz-4.1MHz)
•40m 12.5MHz – VFO発振周波数 (7MHz-7.6MHz)
•20m 19.5MHz – VFO発振周波数 (14MHz-14.6MHz)
•15m 26.5MHz – VFO発振周波数 (21MHz-21.6MHz)
•10m 33.5MHz – VFO発振周波数 (28MHz-28.6MHz)

ちなみに、VFOの発振周波数は 5.5MHz~4.9MHzであり、VFO発振周波数が5.5MHzの時がダイアル上では一番低いダイアル位置となる
例えば、7.195MHzを送受信する場合は、VFO発振周波数は5.305MHzである
上の表から、 12.5MHz – 5.305MHz = 7.195MHz  となる
周波数カウンタで7MHzの受信周波数を直読する場合は、オフセット周波数の12.5MHzから測定周波数を減算する事で直読が出来る

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<実際に受信周波数を表示してみた>

TS-520の場合も 他の機種と同様SSBを受信してゼロイン後に表示周波数が受信周波数と同じになる様にオフセット調整を行う
TS-520 の場合も、3.5MHz,7MHz,14MHz,21MHz,28MHzなどをバンドメモリにそれぞれオフセット周波数を登録し、バンド毎にメモリの切替が必要になり、モード毎のオフセットが気になる場合はモード(USB,LSB,CW)の切替も必要となる

純正品のDG-5ではバンド設定は無線機内部の局発信号とキャリア周波数を演算しているので、無線機本体のUSB,LSBのモードとバンド切替は周波数カウンタの表示に反映されるのである (当時としては素晴らしい機能である)

しかし、これでもバンド切替をマニュアルで操作すれば、ほぼDG-5の代わりに使えるのである
やっぱりビンテージマシンは周波数直読が便利ではある

TRIO TS-520 用 直読周波数カウンタ DG-5

TRIO DG-5

FG-5

 

TS-520シリーズ用、直読周波数カウンタである この周波数カウンタの素晴らしい点はTS-520本体のバンド切替えに連動して周波数表示がされることである
当時としては、画期的な直読周波数カウンタと思う
また、一般の周波数カウンタとして、100KHz~40MHzまで100Hz単位で計測出来る

このカウンタは、TS-520本体のリアパネルから以下の3つ周波数を入力して、現在の送受信周波数を表示する
・HET  TS-520のバンド毎の局部発振周波数
・VFO  発振周波数
・CAR  キャリア発振周波数

表示周波数の計算概要は次の通りである

表示周波数 = HET周波数 –  (VFO周波数 +  CARキャリア周波数)

 

さて、TS-520で件の直読型周波数カウンタは使えるのだろうか?
DG-5の機能である本体の局部発振とキャリア周波数の読取りが出来ないので、本体のバンド切替え連動は出来ない
FT-101と同様に、各バンド毎にオフセットメモリを設定して、切換えることで代用に使えるとは思うのである

TS-520は昔保有していたのであるが、使わないので差し上げたのである
実機があれば実際に動作を試してみたいのであるが、また出物が有れば探してみたい

DG-5は外観も薄型でTS-520の上に置いても違和感の無いデザインである
当時はアナログVFOのデジタル直読が出始めた頃である
とてもカッコ良くて当時は憧れたものである

 

FT-101やTS-520等のファナル調整について

現在の無線機だと無調整となっており、オペレータは殆ど意識する事は無いのである
(一部リニアアンプ除く)
FT-101とかTS-520等の終段が真空管の無線機は、送信する周波数毎に調整が必要である
これを無視して、送信すると出力が低減するばかりか、無線機自体を壊すことになる
調整不良で送信すると、本来アンテナで消費すべき電力が終段の回路で消費されるため、厳に慎まなければならない

これから、昔の機械を入手したい人も多いと思うので簡単に説明をしたい
最初に操作系から
1.PRESELECT(YAESU系),DRIVE(TRIO系)と記載されているツマミ
これは終段管に入る前の、DRIVERと呼ばれる前段までの同調であり、受信回路と同期しているので通常は、送信するする周波数で最大の受信感度に調整する
2.PLATEと書かれているツマミ
これは終段出力の同調を行うバリコンが接続されている。最初に送信する周波数に合わせてから、プレート電流をモニタしながら一番少ない値になる様に微調整する (プレート電流が下がる点がディップ点と呼ばる)
3.LOADと書かれているツマミ
これは、アンテナとの結合度を調整するバリコンが接続されている。最初は左に回し切った状態で、前項のPLATEで同調を取り、少しずつ結合度を上げながら前項のPLATE同調を、ディップ点が無くなるまで繰り返す。

当然これらの調整は、搬送波(キャリア)を出力しての調整となるので、送信モードはCWかTUNEで行う

調整手順は大まかに以下の通りである (機械が正常な場合)
1.送信する周波数で受信感度が最大になるように、PRESELECT(YAESU系),DRIVE(TRIO系)を調整する
2.アンテナをダミーロードに切り替える
3.送信モードをTUNEに切り替える
4.CAREER(CAL)をツマミを絞る
5.PLATEを送信する周波数に合わせる
6.LOADを左に回し切る
7.送信し、プレート電流を各機械の設定値以下にCAREER(CAL)で調整する
8.送信し、PLATEをIP電流の一番少ない位置に微調整する
9.LOADを少し右に回して、PLATEをIP電流の一番少ない位置に微調整する
10.前項8~9を繰返し、プレート電流のディップ点が分かり難いなったら終了
(これらの操作は取説に従って下さい、この操作については責任は負いません)
送信するバンドを変更した場合は、上記の手順を再度行う必要がある
昔の機械を使用する場合は、送信までのセレモニーが面倒でもあるが、このセレモニ-も楽しめるようになる
貴重な文化遺産であるビンテージマシン、次の世代に大切に引き継いで行こうと思う

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