TS-520X のMAKER を較正してみる

件のTS-520Xのマーカ発信器を較正してみた
TS-520XはMKR-3と呼ばれる25KHzのマーカ発信器がオプションとして本体に内蔵が出来る
このTS-520Xは内蔵されていたが、この頃のVFO機は水晶発振子によるマーカ発信器が必要不可欠であった

送受信周波数の読取りはVFOダイアル外周部のゲージで読み取るのであるが、その位置をマーカで校正するのである
MKR-3は25KHzの発信器であり歪を多くした出力回路で、高調波成分を多く出力する様になっている
その高調波成分を25KHz刻みの信号を受信して、ダイアル位置を合わせるのである

周波数カウンタをMKR-3の出力端子に接続するも、上手く発振周波数を測定出来ないのであった
今回は直接、出力トランジスタのコレクタから信号を取り出しして周波数の測定をしてみた

IMGP6090

<TS-520Xの25KHzマーカ発信器 MKR-3>

今回のMKR-3の実測周波数は25.00109KHzであった、定格値は±1Hzなので要調整範囲であり
この場合10MHzでは436Hzのズレとなり、21MHzであれば約900Hzのズレとなってしまうのである

IMGP6091

<較正前は25.00109KHz>

IMGP6092

<較正後は25.00018KHz>
MKR-3のトリマコンデンサで調整を実施し、25.00048Hz位までトリマコンデンサで調整出来た

これ以上の調整を行う場合は、トリマコンデンサの容量を変える・インダンクタンスを挿入する・水晶を変える・の選択肢となる
今回は定格値に入っているので良しとするのである
この場合10MHzでは192Hzのズレで、21MHzであれば約400Hzのズレである

まぁ、アナログVFOのキャリブレーションとしてはOKである

ちなみに、マーカ発信器の校正は10MHzのJJY信号とのゼロビートを取ることで行ったのである (JJYも無くなり寂しい限りである)
従ってこの頃のマシンは10MHz帯が受信出来るようになっているのである

マーカ発信器はVFO機では欠かせない機能であった

方形波 の スペクトラム を測ってみた

方形波のスペトクラムについて

正確なサイン波以外の場合は高調波を含むのである
この事は、今更のことであり詳細に数学でも証明されている
(恥ずかしながら、私は証明出来ないが)

さて、オシロスコープの波形を観測することは、時間軸での電圧や電流の変化をモニタ画面で観測することである
そして、周波数成分とその強さをモニタ画面にプロットするする測定器がスペクトルアナライザである
最近では、デジタル処理技術の向上で、デジタルオシロスコープはFFT変換機能によって取り込んんだ時間軸での測定結果を周波数軸に変換出来る
周波数が比較的低ければ、デジタルオシロスコープはスペクトルアナライザを兼ねるのである

さて今日のイタズラは、方形波をスペクトルアナライザで観測するとどうなっているかである

昔の無線機では、マーカと呼ばれる発振器が付いていた
これは切りの良い周波数、例えば100KHzで正弦波をわざと歪ませた発振器である
マーカ(無線機によってはCAL  [Calibration])スイッチをONにする事によって整数倍の高調波を発生させ、その信号を受信することで、無線機の送受信周波数を確認している

100KHzのマーカで7.1MHzの受信周波数を確認する場合は、71倍の高調波を受信していることになる
正確なマーカ発振器があれば、発振周波数の整数倍の周波数で送受信周波数の校正が可能となる

例として、5MHz方形波の出力のOCXOのスペクラムと件のTS-700GⅡのスペクトラムを測定してみた

IMGP5837
<5MHzOCXOの方形波出力のスペクトラム 5MHz毎のスペクトラムが出力されている>

IMGP5838
<820MHz付近まで、観測出来る周波数が出力されている>

IMGP5839

<TS-700GⅡのマーカ発振器のスペクトラム 100KHz毎のスペクトラムが出力されている>

IMGP5840

<TS-700GⅡのマーカ発振器のスペトクラム 145MHz付近でも100KHzのスペクトラムが出力されている>

方形波の出力は、これだけの周波数成分を持った発振器である
今や、送受信周波数の確認も、パネル面の数値表示だけで確実にわかる時代である
そのため、現在ではマーカ発振器を使うことも殆どなくなった

しかしながら、デジタル表示機能が無い1970年代前半まで機械を使いこなすには、マーカ発振器は必須なのである

TS-700GⅡ の修理にチャレンジ その3 固定チャンネル発振停止やマーカ修理

シルバーウィークも3日目である (ちょっとしつこいのであるが)
本日もTS-700GⅡを突いていのるであった

さて昨日はVFOを片付けたのであるが、その後色々とチェックした所、固定チャンネルの状態が思わしくない
固定チャンネルの状態で、チャンネルランプが点滅するのである

まあ、このTS-700 GⅡを現役復帰させた所で、固定チャンネルを使う事は少ないと思うのであるがそうは言っても、気持ちが悪いのである

TS-700で素晴らしいのは、VFOや固定水晶の発振が停止すると、パネル上のランプも消灯するのである
なので、オペレータはこの表示で、正しく動作しているかを確認出来る
この不具合については、VFOランプは常時点灯なのに対して、固定チャンネルだけが消灯するのである

で、ブロック図を参照すると、HET UNITのQ1かQ2辺りの水晶発振回路か発振増幅回路ではないとか予想してみる

IMGP5806

<HET UNITの発振状態を追ってみた所>

オシロスコープでQ4のコレクタを確認した所、発振の振幅がチラチラと変化してるのが確認出来た
まずは、HET UNITのQ3 2SC470 を交換してみる
発振の振幅は大きくなったが、まだ発振の振幅が変化する、固定チャンネルのランプもチラツキが大分減ったが、まだ多少のチラツキがある
で、Q4の2SC470も交換してみる
これで、発振の振幅は一定となった

IMGP5808
<交換した箇所>

さて次に新たに見つけた不具合は、マーカが動作しない事である
それなり正確な信号源はあるので、家で使う分には周波数校正で困る事は無いと思うが、これもやはり気持ち悪いので修理にチャレンジした
これは、TS-700とTS-700 GⅡでは構成が異なるである
TS-700は1MHz発振で、VFOの起点と終点で校正を行う、TS-700 GⅡではロジック回路で分周して100KHz出力となっており、100KHzのポイントでVFOの校正が可能となっている

で、原発信のオシロスコープで確認するとこれも発振不良である、とりあえず2SC458を2SC2668に交換してる
バッチリである、発振を確認すると綺麗に発振している
周波数カウンタで100KHzの調整を行う 低い周波数の場合はレシプトリカル方式の周波数カウンタが必要である
100KHz出力をトリマで合わせ込んでマーカの修理は完了なのである

ちなみに今時の機械でマーカを使用する事は無い
マーカとは正確な周波数で発振する発振回路に出力を故意に歪ませた発振回路で、出力が歪んでいるために百数十倍位の逓倍波が放出される
その逓倍波を受信して、基準信号としてVFOを校正するのに用いる
VFOを使用している機械は殆ど搭載していた機能である

IMGP5805

<TS-700GⅡのマーカユニット>

新たな問題が…
マーカで、VFOのリニアリティ(VFOの目盛りと周波数の同期)を確認したのであるが
VFOの始点付近で、3KHz程度のズレがあるのである (>_<)
この調整には、VFOのカバーを外してバリコンの羽を調整する事になるが、超面倒そうである
この癖を覚えておけば良いので、今回はこのままにすることにした

必要なら、件の周波数カウンタのTS-700対応版を作って、TS-700Sもどきとする手も無くはない

次回に続く