TS-700無印のディスクリミネータ

先日TS-700GⅡのFM復調の不調のため、TS-700無印からFM検波コイル(ディスクリミネータ)を移植したのであった
TS-700無印はセンタメータ機能が無いので、セラミックのディスクリミネータの移植を考えていたのである

IMGP6164

<ディスクリミネータ(T1,T2)を外したTS-700無印のFM IF UNIT>

TS-700無印とTS-700 GⅡ共にレシオ検波である、TS-700 GⅡは検波後の位相差をセンタメータに利用している

TS-7002_detector

<回路はTS-700 GⅡのもの T3,T4 は無印のT1,T2と同等>

今回は後段T2側の不具合だったので、T2の替わりにセラミックディスクリミネータを取り付ける計画であった (若干回路変更が必要なので小さな基板をでっち上げるつもりであった)
T1については検波前のトランジスタを動作せるために使う予定で考えていたのであるが
とりあえず、問題のT2を作業開始前に再度取付けて確認してみたら、正常動作していたのである

\(^o^)/

正常動作した原因で考えらる点は、前回取り外した後段のディスクリミネータを分解しようとして色々とコジッた位である
そこで、内部の接触不良が復帰した可能性が高いと思っている

これでTS-700無印も動作品に復帰してしまったのであった、暫くこれで様子見である

(部品が普通に購入出来るのであれば無条件で交換であるが….無い部品は大切である)

まぁ40年以上前の機械である、TS-700の設計者も、ディスクリミネータの設計者も40年経ってからも使われるなんて夢にも思っていなかったであろう

IMGP6190

<代替で使う予定だった 455KHzセラミックディスクリミネータ>

 

TS-700無印の デビエーション調整 と 搬送波抑圧比調整 をしてみる

件のTS-700無印である
今回思い切って、デビエーション調整と搬送波抑圧比調整をしてみたのである
まずは搬送波抑圧比の現状から

IMGP6119
<145MHz USBの搬送波抑圧比33dB>

あまり良くないのである

 

いわゆる、少しキャリア漏れ状態である

色々と調整を追い込んでみるが、搬送波抑圧比は36dB位までしか追い込めないのである
本来であれば、もう少し追い込んで40dB以上の状態まで持って行きたい所である

ここはちょっと匂いがするかも知れないが、ほんの少しのキャリア漏れは愛嬌として誤魔化すってものであろう
もともと、SPOT-SWでキャリアを派手に出してガイトトーンを出す機能の付いている、TS-700無印である
また時間がある時にでも、また遊びながら追い込んでみたい
デビエーションについても測定してみた
この機械が販売されていた頃は、145MHz帯のFMセパレーションは40KHzのワイドであった
TS-700無印は内部のコネクタ変更で送信帯域を変更出来るのであるが、現在20KHzセパレーションの状態では、お隣さんへ混信してしまう状態である

多分この機械が現役だった頃は、となりの周波数ではザワザワ感がしたのであろうと予想する、古き良き時代であった

IMGP6121
<FMのデビエーション調整前はワイドモードである>

とりあえずは現行基準でデビエーションを4.8KHz程度に調整をしてみた
これでFMについては、周りにご迷惑を掛けることは無い

古い機械だからこそ、最低限の電波の質については気を遣いたいものである

IMGP6122

<FMのデビエーションを4.8KHzで調整する>

TS-700 無印を弄ってみた その3

内蔵電源が正常となったTS-700無印である
次にVFOの発振不良対策と受信調整を実施を行った

VFOの発振不良は、前回のTS-700GⅡと全く同様である
本体からVFOを取り外しして、バリコンのアース接点を接点洗浄剤で清掃する
私は、アース接点とバリコンのロータシャフトの間に木綿糸を通して清掃している
一通清掃して、全域で発振不良が無いことをオシロスコープで確認して、問題がなれば終了である

IMGP5992

<VFOのアース接点の清掃>

IMGP5993

<全域で発振不良が無いことをオシロスコープで確認する>

次に受信調整である

SGの替わりに、いつもの30MHzまでの矩形波発振器で29MHzを発振させて、その5倍波を受信信号としてテストする
とりあえずは一通りの受信が出来ている事を確認しているので、RX-NBユニットのコア調整である
これも、大きな狂いは無かったが調整する事でSメータ一個分位のゲイン向上となった

ここまでは順調である
さて電源を修理したことで、4W程度の送信出力がどこまで回復したのであろう
実測した所、7W程度は出ているが10Wまでは届かないのであった

と言うことで送信調整をやってみた
TS-700無印のファイナルユニットは裏面もシールドされている
(TS-700GⅡは剥き出しである)
で順を追ってトリマコンデンサの調整をしたのであるが、ファナル部分の調整でも8W程度である(SSB,FM共)

次にMIXユニットの調整を行う
ここのコアとトリマコンデンサの調整を行うのであるが、この基板のTC1-TC3の3個のトリマコンデンサの調整がシビアである
と言うより接触不良状態である
特にTC-2については回しても何の変化も無いのである
トリマコンデンサについては経年劣化での不良が多いと思う
手持ちの該当品は数が少ないので、TC-2だけまず交換して調整をしてみる

IMGP5995

<MIXユニットのトリマコンデンサ 経年変化で回すと不良となる確率が高い>

IMGP5994

<MIXユニットの裏面である ハンダ除去して折り曲げを元に戻す パターン剥離には十分に留意して作業を行う>

IMGP5997

<交換したトリマコンデンサ TC2>

 

交換後、再度調整で12Wの出力を確認したのであった
とりあえずは、この機械も何とか使えそうである

SSBのキャリアポイント調整とFMのデビエーション調整を行えば、一通りの確認は終わりそうである

 

TS-700 無印を弄ってみた その2

前回の続きのTS-700無印の電源不具合の追っかけである
不具合内容は、20V出力の電圧値が18V以下であり
強いて挙げると、通電中にキィーンと言う発振音が聞こえる事であった

私もサラリーマンなので、平日は普通に仕事である
平日だと中々この手を弄る時間が取れないのであるが、一日30分程度色々と弄っていたのである

故障箇所

<TS-700 電源部の回路 赤丸部分が今回不具合箇所>

この回路のミソはD2とD3の間である
DC入力の場合は13.8V、AC入力の時は整流後のDC電圧16.8VがD2のアノードに印加されている
Q1で発振したパルスをQ3.Q4-Q5.Q6で電力増幅して、そのプラス電圧分がD3のアノードに印加されて、電圧が倍圧される仕組みである
その倍圧した電圧をQ7.Q12で20Vに制限して安定化させている
当時としては凝った電源回路である

20Vを必要している理由は、終段の2N5642(元祖はモトローラ)の入力電圧を確保するためである
ちなみに、このトランジスタは125MHz~175MHzまで最大20Wを出力出来る(28V入力時)

前回も少し書いたのであるが、33μFのコンデンサの代わり10μFのコンデンサが3個並列に接続されていた
(回路図の赤丸のD9のとなりC18である)
この理由も分かったのであった

IMGP5989

<3個連結のコンデンサと故障していたダイオード>

結論は、回路図の赤丸のD9(1N60)がショートモードで破損していたのである、更にD9に接続される100Ωの電流制限抵抗がパスされていたのである
その結果、D3のアノードへ印加される倍圧されるパルス分がC18を通してグランドに短絡したため、20Vラインの電圧が低下していたのであった

この電源を以前に修理した人は、最初にC18パンクの対処をしたのち、Q7のベース電圧が上がらない(すなわち20Vが出ない)のでD9に繋がる100Ωの電流制限抵抗を外したのであろう
その処置後C18の発熱に気が付いて3個のコンデンサので発熱を吸収させたと考えられる、Q1とL1の負荷による発振音は目をつむったのであろう

数十年もの年月が経つ機械である、経年変化もあれば改造等々もあるであろう
幸せな事は、当時の技術資料がネットで簡単に入手出来ることである
とりあえず電源ユニットは正常となり、定格の電圧の確認が取れたのである

まだまだ先は長そうである

TS-700 無印を弄ってみた

本日は、午後時間が空いたのでTS-700無印を弄ってみたのであった
到着した時に、ざっと現状を確認しておいたのであったが、不具合点は以下の3点であった

1. VFOが250KHz以上でないと動作しない
2. 出力が4W程度しか出ない
3. マイクゲインが少ない

VFOバラシは別の機会とすることにして、マイクゲインと時間があれば出力を見てみることにした
まず初めてのご開帳である、上面は長年の埃が堆積しているが、下面は大変きれいである
これには驚きである

IMGP5960

<TS-700の裏面 とても綺麗で驚きである>

マイク端子を確認してみると、後からハンダ付した後があった
とりあえずマイク端子に繋がるケーブルを外してハンダを吸引して、最取り付けをする

IMGP5959

<マイク端子は弄った後が…>

次にダミーロードを繋いで、AF発振器からマイク端子に1KHzを入れてFMを出してみる
とりあえずは、まともな変調が掛かっていそうである
別の受信機でモニタしながら、マイクゲインのツマミを回してみると完璧にガリっている
マイクゲインのボリュームを10回程回した所でとりあえず、ガリは落ち着く

USBで送信したみると殆ど出力が出ていないのである
これもマイクゲインのツマミを回してみる、可変抵抗器の位置で一瞬だけ出力が出るポイントが有った
数度回してみるが酷いガリ状態である、これは可変抵抗器の交換が必要であるが、合致する手持ちが無いのでカバーの隙間から接点復活剤をピンセットに付けて、一滴程流しこむ
その後10数回程回した所でとりあえず、ガリは落ち着いた
(代えないと又時間経つと再発するであろう)

マイクゲインについてはこれで問題は解決である

ちなみに、このTS-700も固定チャンネル切替SWと周波数切替SWにたっぷりと接点復活剤がスプレーされた後がある

VFOランプがチラつくのは、なんとなく接点不良の感じがするのは理解出来る、しかし無闇に接点復活剤をスプレーするのは、止めるべきである

IMGP5961

<接点復活剤でベトベトになっているロータリーSW これは洗浄が必要>

続いて送信出力である
TS-700の場合は、内蔵のDC-DCコンバータで20Vを作っており、まずはこの電圧の確認からである
DMMを繋いで電圧を測ってみるが18Vである
電源ユニットのVR2が20Vが規定値なのであるが18V以上には上がらないのであった

ざっと目視で電源ユニットを確認して見たところ、一箇所が変な実装がされている
前のオーナなのかショップなのか不明であるが、33μFのコンデンサの代わりに10μFを3個並列につないであった

IMGP5964

<無理矢理10μ三個で、30μFとしてある>
とりあえず外して定格の50V33μFを取付けてみる
外したコンデンサは容量には問題は無かった

残念ながら本日の作業は時間切れである
この後の追っかけは、また後日

TS-700 無印が届く

縁あって、最近我が家へやって来たTS-700である
このTS-700も件のTS-700GⅡと同様にジャンク同様である

IMGP5943

<TS-700無印 インジケータが暗く、全体に清掃が必要 頑張れ40年選手!!>

IMGP5945

<内部にも埃が堆積している>

そうは言っても、一通りの動作確認をやってみた
後部の電源コネクタから直接DC13.8Vを供給ししてみる、良くみると後面パネルに電源端子の接続説明シールが貼られている

IMGP5947

<4PINの電源端子の接続図が貼られている>

取り敢えず、ダミーロードを繫いで電源を投入してみる
電源は入るし、受信ノイズは聞こえるのである
VFOの表示ランプは点かないので、VFOを回してみると点灯するポイントがある
このTS-700も件のTS-700GⅡと同様に、VFOバリコンの接触不良があるのだろう
ハンディ機で、VFOが動作する周波数で送信してみると、受信音の確認は出来る
受信は大丈夫そうである

試しにFMで送信してみる、このTS-700も出力が4W程度に落ちている
マイクを繋いで送信してみると変調音がかなり低い、USBに切り替えて送信してもパワーが殆ど出ない
マイク入力系に何らかの不具合があるのだろう

以前に記載したがTS-700(無印)でも、整備すれば通常に運用するには十分に使えるとは思う
当然現代の機械の方が、性能と特に使い勝手は雲泥の差である、しかしTS-700シリーズには現在の無線機が持っていない雰囲気がある
重厚なVFOの操作感が、古き良き時代を思い出せてくれるのである

また、TS-700無印だけに備わっている機能に、’SPOT’スイッチ’がある
これは、SSBで送信した時に相手に、ゼロインをしやすくするためにキャリアをワザと送信する機能である
慣れているとSSBでの同調は造作も無いが、当時のTRIOはSSBを少しでも使いやすくするために、この機能を付けたのであろう
今となってはこの機能は使うことは無いと思うが、TS-700無印同士でSSB交信するときに、しゃれで使ってみると面白いかも知れない

只、現代で運用するには決定的に使いにくいポイントがある (VFO機全般のことであるが…)
それは、144MHz台と145MHz台を跨ぐ運用である
例えば、145.08MHzから144.92MHzに周波数を変更する場合は、バンド切替えを145MHz~144MHzに切り替えて、VFOを08から92まで回す必要がある
現代の機械なら、周波数ダイアルを数クリックで済むオペレーションである

更に固定水晶であるが、これはVFOの発振周波数8.2MHz~9.2MHzまでの間を水晶で発振させるものである
従って、バンド間を跨いでのワンタッチ切替えが出来ない
基本設計が1970年代前半である、当時は呼出周波数も144.48だったので、現在みたいな不便さは無かったと思う
この機械を運用する場合は、「機械の操作を楽しむ」と言う割り切りが必要である
(USBやCWは快適である)

また時間が出来たら、こいつも整備してみたいと思う