現在は色々な回路で使用されているDC-DCコンバータである
昇圧型のDC-DCコンパータは、内部の発振器で発振させた信号を昇圧した電圧を利用している
約80年前にもDC-DCコンバータは存在していたのである
名称は回転式直流変圧器である
<地三号受信機の回転式直流変圧器>
これは、直流モータでダイナモ発電機を回転させて発電する力技の、電力変換器である
入力がDC6V出力がDC200Vである
この回転式直流変圧器は、旧陸軍の地3型受信機に使われていた変圧器である
一般的に真空管を動作させる場合は、プレートに対して数100Vの電圧印加が必要であり、この変圧器は受信機のプレート電圧を確保するために使われている
交流電源が用意出来る場所であれば電源トランスで済むのであるが、交流電源が利用出来ない場所で使うために用意されている
元々真空管のヒータ電源として6.3Vが用いられていたのと、当時の自動車は6V電装が主流だったので入力電圧が6Vだったと思う
さてこの回転式直流変圧器であるが、大先輩の矢花氏から見てもらえないか とお預かりしたものである
内部のロータは固着しており、モータ部分の道通はあるがダイナモ発電機出力の道通は無かった
多分ブラシの接触不良であろう
70年以上前の貴重な重要文化財である、壊さないように慎重に作業を行う
まずネジは全て’―’ネジである 手持ちの工具箱から全てのマイナスドライバを取り出す
ネジ山にフィットするドライバを使用しないと、ネジ山を痛めるためである
電気回路修理には原則スプレー式の潤滑剤は使わないのであるが、長年の年月でネジは固着しているのでネジや接合部にスプレー式の潤滑剤を吹き付ける
1日以上置いておくと潤滑剤が浸透しネジの固着が緩和される
本来であれば全部を分解・洗浄・組立・再給脂となるのであるが、ベアリングを外す専用プーラが無いのでブラシ部分の清掃とベアリング部分の洗浄、電極接点磨きを試みてみる
一通り作業を行って、ダイナモ出力の抵抗値を見ると約600Ωと道通している
モータの電源にはCC制御が出来る電源を使用し電流制限値は3Aとしてみる
MAX電圧は3Vとして、まずは様子を見てみることにした
モータ入力にDCを印加すると、電流値はMAXの3Aとなりその時の電圧は約0.9Vであった
ロータを外から回してみると回転したのでユルユルと回転したのであった
モータ側のブラシ位置を調整してみたところ、きちんと回転を始めたのである
電流値は約2.5A、電圧値は3Vである
ダイナモ側のブラシ位置の調整をした所、100V程度の電圧が確認出来た
この状態で、発熱・発煙・異臭・異音が無いことを確認して、徐々に電圧を上げて見る
出力は無負荷であるが、モータ電圧6Vで205V程度の出力を確認出来たのである
<回転中の回転式直流変圧器 2次側無負荷で6V 2.7A程度の消費電力>
<2次側無負荷の出力は 205V>
とりあえずは、この回転式直流変圧器の基本部分は動作している事を確認出来たのである
しかしOHは必要であるので、軸受け構造など確認の上でOHを考えてみたい
<試運転の動画である>